認知症と在宅医療
<目次>
認知症と在宅医療
通院困難な方を対象とする在宅医療において、在宅医療の対象となる認知症の方は少なくありません。
高齢で身体機能が低下した方に認知症が合併している場合もあれば、身体的には一応自立しているものの認知症は進行していて病識はなく病院への通院を拒否する方まで、その状態は様々です。
また、認知症に関しては、患者さんが多い一方で専門医が少ないことも問題となっています。
このため、専門ではない医師が認知症の診療を行うこととなり、記憶障害を認めただけで精査をせずにたんに「認知症」もしくは「アルツハイマー病」と病名がつけられ、漫然と認知症治療薬が投与されている現状があります。
しかし、実際には認知症に間違えられやすいが全く別の病態や、治療可能な認知症も存在し、アルツハイマー病は認知症全体の約50-60%程度です。
もちろん、半分以上はアルツハイマー病ですのでアルツハイマー病について詳しく知ることは認知症を知ることにつながりますが、必ずしも認知症イコールアルツハイマー病ではないことを理解する必要があります。
認知症のタイプが異なれば、その症状や対応も異なります。
このため、この記事では、認知症に関して、その疫学から診断、分類と治療に関してご紹介しようと思います。
在宅医療を提供してくれる医療機関の違い(在宅療養支援診療所ってなに?)
- 在宅医療を頼める主な医療機関は、24時間365日対応する地域の在宅療養支援診療所
- 一般の在宅療養支援診療所よりも医療機能を充実させた機能強化型在宅療養支援診療所もある
家族の在宅医療(訪問診療)を望んだ時、今まで通院していた病院やクリニックの先生が、自宅まで診療に来てくれればいいのですが、在宅医療をしていない場合もあります。
大学病院などの大きな病院では、まず100%不可能でしょう。
その場合は、病院の医療相談室や医療連携室のソーシャルワーカーさんなどに自宅の近くにどんな医療機関があるのか聞いてみましょう。
または、インターネットで調べてみましょう。
その時には「在宅療養支援診療所」を検索ワードに追加してみて下さい。
例えば
>Google ⚪︎⚪︎市 在宅療養支援診療所
そうすると、あなたの住んでいる地域にある在宅療養支援診療所を探すことができます。
では在宅療養支援診療所とはどんな診療所なのでしょうか?
自宅での看取り
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- 高齢化の先に多死時代となる
- 「どこで最後の時を迎えたいか」のアンケート結果
- 在宅医療を活用することで最後の時を自宅で迎えることは可能
- どう死にたいかについて事前に話し合っておく
- 看取りが近い時の点滴について考える
- 急変時に救急車を呼ばないほうがいい場合もある
- せん妄
- 終末期の自然経過
高齢化の先に多死時代となる
- 今後年間の死亡者数が増え続け、2030年には47万人の死に場所が確保できなくなると予想されている
現在、約8割の方は病院で亡くなっています。
今後、高齢化率に比例して年間死亡者数も増加し、2030年には160万人が死亡する多死時代に突入すると考えられています。
厚労省の推計によれば2030年には47万人の死に場所が確保できなくなると予測されています。
「どこで最後の時を迎えたいか」のアンケート結果
- 終末期に自宅で過ごし最後の時を迎えたいという人が6割から8割いる一方で、自宅で過ごしたいが実現は難しいと考える人も6割いる
どこで最後の時を迎えたいかに関して、いくつかの調査があります。
1997年の厚生白書では、高齢者が死亡場所として望む場所で「自宅」と答えた方は89.1%にのぼります。
2008年の「終末期医療に関する調査等検討会」報告書によれば、63.3%が終末期に自宅で療養することを希望しているものの、65.5%は、「介護してくれる家族に負担がかかる」「症状が急変した時の対応に不安がある」といった理由により実現困難であると回答しています。
2012年度の日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団の調査でも、癌で余命が1,2ヶ月に限られたら「自宅で過ごしたい」と答えた割合は8割に達しました。
しかし、「自宅で過ごしたいが、実現は難しいと思う」と回答した人が63.1%います。
在宅医療を活用することで最後の時を自宅で迎えることは可能
- 在宅医療を活用することで終末期を自宅で過ごすことが可能となり、さらに希望すれば看取りまで家で行うことも可能となる
これらアンケートの結果からは、多くの人が「終末期を自宅で過ごしたい」「自宅で死にたい」と希望していながら、その希望を叶えるのは難しいと考えているようです。
しかし、ここ数年で在宅医療を提供する医療機関は増加し、医療介護連携も以前よりスムーズとなってきました。
在宅医療にかかる費用
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- 訪問診療で必要となる費用
- その他追加でかかる料金
- 費用に関する様々な助成制度
- 高額療養費制度
- 看取りにかかる費用
訪問診療で必要となる費用
- 訪問診療で必要となる費用は住んでいる場所や重症度によって幅がある。一割負担の場合、月に3千円から8千円程度。
訪問診療の費用に関しては保険診療ですので各種健康保険が適応となります。
費用のベースとなるのは、在宅患者訪問診療料と在宅時医学総合管理料または施設入居時等医学総合管理料の2つです。
これは具体的には、訪問して診療することにかかる料金と、24時間365日対応し健康を管理するためにかかる料金です。
初診時には状態把握の目的もあり月に2回は定期訪問が必要となると考えると、お住まいの状況や収入によって金額は異なりますが、1割負担の方で3,000円から6,000円ほどとなります。
また、訪問診療において多くの場合はケアマネジャーに情報提供し医療介護連携をはかることから居宅療養管理指導料が必要となり、これに月に約500円がかかります。
在宅医療を始めるには
<目次>
- (1)在宅医療を始める前に
- (2)在宅医療を始める時に相談する人
- 1.通院から在宅医療
- 2.入院から在宅医療
- (3)在宅医療が始まるまでの流れ
- 1.在宅医療(訪問診療)を利用することについてかかりつけ医の同意を得る
- 2.在宅医に連絡し受け入れ可能かどうかを問い合わせる
- 3.事前訪問
- 4.訪問診療開始
- (4)介護保険制度の利用
- (5)在宅医療を始めるにあたって確認しておくこと
(1)在宅医療を始める前に
- 在宅医療を始めるには、患者さんと家族の「家に帰って過ごしたい」「家にいてほしい」という思いが大切
在宅医療を始めるきっかけは、多くの場合は、病院や診療所の先生や看護師さんや医療連携スタッフ、あるいは介護サービスを受けてらっしゃる方は、ケアマネージャーさん、施設の介護士さんなどの働きかけです。
もし、あなたが、家族に在宅医療を受けてほしいと望んでいるなら、勇気を出して、主治医や看護師さんや介護スタッフに相談してみましょう。
あなたの近くに手を貸してくれる人が誰かいます。
在宅医療を始めるに際して大切なことがあります。
それは、患者さん本人と家族の「家に帰って過ごしたい」「家にいてほしい」という思いです。
この思いがあれば、遠慮は要りません。
一歩、前に足を踏み出しましょう。
(2)在宅医療を始める時に相談する人
1.通院から在宅医療
あなたの家族が、先月までは定期的に病院や診療所などの医療機関に通院していたが、脳梗塞の後遺症があったり、認知症の病状が進んで、自分一人では医療機関に通うことはできなくなった。あなたが付きそうにしても、平日に休みが取れない。困ったなあ〜。
このように日常生活を行うのができなくなった人は介護保険の介護サービスが必要な人がほとんどです。
いま、介護サービスを利用している患者さんは、まずケアマネージャーさんに相談しましょう。
ケアマネージャーは介護支援専門員と言って介護が必要な人のために、どういった介護サービスが必要なのか、一人一人の状態に合わせた介護サービス計画(ケアプラン)を作成し、介護サービスの調整、管理を行う専門職です。
大抵のケアマネージャーさんは、患者さんの近くで在宅医療を行っている医療機関をいくつか知っています。
在宅医療ってなに?
<目次>
- 在宅医療ってなに?
- 在宅医療は"入院と外来に加わる第三の治療の選択肢"
- 在宅医療の具体的事例
- どんな人が対象になるの?
- 24時間365日対応してくれるの?
- どれくらいの費用がかかるの?
- どこで在宅医療を受けられるの?
- 始めるにはどこに相談すれば良いの?
- 在宅医療を受ける前に何を準備すればいいの?
- 在宅医療では薬は受け取れるの?
- いまなぜ在宅医療なのか
在宅医療ってなに?
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在宅医療とは、ご自宅への定期的な訪問診療を基本とした24時間365日の対応をし、緊急時には臨時の往診を行う医療方法
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在宅医療で提供できる医療サービスの質と量は、入院治療と外来治療の間のイメージ
在宅医療を理解するにはまず訪問診療について理解する必要があります。
訪問診療とは、医師が自宅または施設に定期的(一般的に月に1回から2回)に訪問し、計画的に健康管理を行うものです。
24時間365日の対応を行うことも訪問診療に含まれています。
医師が自宅にうかがって診察をするというと往診という言葉を思い浮かべる方も多いと思いますが、往診は患者さんもしくはご家族の要請を受けてその都度診察に行くもので、一般に臨時往診と言われるように臨時のものです。
この、訪問診療と臨時往診を組み合わせたものが在宅医療となります。
狭義の在宅医療に加えて訪問看護や訪問歯科診療、訪問薬剤指導に訪問栄養指導など、在宅で行われる医療全般を含む在宅における医療の総称として、在宅医療という言葉を使用する場合もあります。
在宅医療を提供する医療機関を在宅療養支援診療所と言いますが、この施設に関しての情報は別の記事で詳しく述べます。
在宅医療は"入院と外来に加わる第三の治療の選択肢"
これまで、治療が必要にも関わらず何らかの理由で通院が困難な方は、入院をするしか医療を受ける方法はありませんでした。
また、入院して積極的な治療を行ったものの病気を根治することはできなかった時、最後の時を自宅で過ごしたいと思っても、点滴やカテーテルの挿入などの医療的処置が常時必要な場合には外来治療では対応することができず、自宅で過ごすことはできませんでした。
在宅医療の普及によって、こういった方々が住み慣れた自宅で治療を継続し、生活を続けることが可能になります。